基本的なルール

GRAND PRINCIPLE

お子さんの矯正を
考えるうえでの大原則

お子さんの矯正治療、歯並び、かみ合わせを考えるにうえで知っておくべき大原則があります。

「ヒトの歯は、一生、自然と、動き続けている。」

このことを知らない方が、割りと多いように感じています。
歯が 動く方向や動く量は、さまざまな要因によって変わってきます。

「動き続けている中で、最も動く時期は子供時代。」

乳歯から永久歯へ歯がはえ代わっていくと、永久歯がはえてくることで既にはえている歯が押されてズレたり、乳歯が抜けることで隙間に余裕ができてガタガタがマイルドになってきたりします。また、歯と歯を包んでいる骨を乗せている土台の骨、つまり上顎骨・下顎骨が大きく成長することで上下の歯の当たり方・押され方が変わって歯が動きます。ですから大人の歯と子供の歯が混ざっている混合歯列期は、激動の時期と言えるでしょう。

ですから、はえてきた歯の位置や向きで一喜一憂する必要は無いと思います。
歯は動くのです。
例えば、下の前歯が一本だけ内側にはえてきちゃったとします。この前歯を平らに並べるのは、矯正医にとっては簡単なことです。歯を並べれば、「先生、きれいになりました!」と患者さんたちは一時的に喜んでくれるかもしれません。
でもその後も歯は動きます。はえ代わりや骨の成長などによって再びガタガタになる可能性は十二分にあるわけです。なんせ、最も動いている時期ですから。
そのことを踏まえて、今、治した方が患者さんにとって得なのか?を、歯医者や親御さんは真剣に考えるべきです。
もちろん歯医者のフトコロや親御さんの治療をさせたい気持ちを満たすためであるべきではないですよね?
例えば、親御さんが子供を励ましながら1~2年本当に頑張って取り外し式の装置を使ったとします。しかし、「これなら子供の時の矯正をしてもしなくても大して変わらなかった」という成長結果になってしまったとき、それなりの納得ができますか?そのような可能性を聞かされていましたか?
がんばった子供もがんばらせてしまった親の心も傷つくケースがあります。

「矯正治療への入口」

矯正治療への入口は非常に重要です。
自分の子供が、将来、大人の矯正(第2期)をするかどうかはわからないのです。
やるかもしれない。
そう!歯は動き、骨は成長して位置を変えていくのです。
そうであれば、キチンとした大人の矯正治療ができる医院で、子供の矯正治療を始める方が自然です。

例えば治療費。
大人(第2期)の矯正を始めるときに、子供のころの矯正料(33万円税込)分が割引になります。同医院なら(一般的に)。
中学高校生になったとき再びガタガタになってしまったときに「さらに大人の矯正をしたい」と希望したが、その医院では「大人の矯正はやってない」といわれ、仕方なく別医院で大人の矯正をスタートするというような場合には、そのような大きな割引はのぞめず、また一からの支払いになることが多いです。

例えば技術。
型を取って模型を宅急便で送れば、技工士さんはきれいな取り外し式の装置を作ってくださいます。「じゃあ、この装置を使っていてね」と患者さんにお渡しして簡単な調整だけをする。このやり方に矯正を希望する患者さん全体を当てはめた診療をしている場合、当たり前ですが、治らない人、治すこともできたのにその時期を逃してしまう人が出てきてしまいます(どれくらいの割合だと思いますか?)。

中学・高校生になって2度目の矯正をしたいと思ったときにも、矯正の専門的な教育を受けて習得していない歯医者だと本格的なワイヤー矯正と呼ばれている治療で好ましい結果を出すのは困難です。それなら、ということでワイヤーではなくマウスピースで治せばいいという考えもあるのかもしれませんが、マウスピース矯正も床矯正装置と同じ面があって、やはり型を取って模型を宅急便で送れば技工士さんがマウスピースを作ってくださいます。そして例によって「じゃあ、この装置を使っていてね」と。しかし、マウスピースだけでは好ましい治療結果は望めません。比較的多くの症例で、補助器具(要はワイヤー矯正です)でのコントロール技術が、マウスピース矯正の結果を決めるといっても過言ではないと思います。ワイヤー矯正の技術がない歯医者が、理論や技術習得の努力を端折るために、マウスピースで矯正を行うというのであれば如何なものかと思います。

例えば負担。
歯に矯正力をかけるとリスクがかかります。そのリスクを負っても、やはり子供である今の時期に早く矯正をした方がよいのでしょうか?慎重な診査診断をした上で出てくるセリフなはずです、「早く矯正した方がいいですよ」は。

 「子供は、大人になっていく、そして大人になる」

結局、重要なのは、良い歯並び・かみ合わせの大人(14,5歳以降)になるかどうかなはずです。
子供のころの矯正治療は、歯並びが良かった思い出作りの体験コーナーではありません。
子供たちが、常に成長していくことを念頭に置いて、今、治療を始めた方がメリットが大きいのか、それとも中2・中3くらいまで待ってから治療した方がかえってメリット大なのか、成長全体の中で、子供の矯正治療を考えなければなりません。

例えば子供の矯正で、骨に大きな問題があるのにもかかわらず、


歯の角度だけで反対咬合や出っ歯を治した場合、骨の成長がほぼ収まり、大人の矯正を始めようとする時期には、骨の問題を手術以外では治せなくなってしまいます。
そうなると、なぜ子供の時の矯正で骨にアタックする診断をしなかったのか?
なぜ取り外しの出来る簡易的な装置を選択し、骨にアタック出来る虎の子の時期をみすみす逃したのか?
を悔やむことになります。
ですから子供の時期の診査診断はやはり重要であり、


成長全体を考えたものであるべきです。


◇大人(第2期)の矯正の開始時期
大人(第2期)の矯正の治療目標はきれいな歯並びで上下の歯をきちんとかませることです。しかし、背が伸びる時期にアゴの骨(特に下顎)が伸びると、当然骨に乗っかっている歯も動いて、上下のかみ合わせだって変ってきます。かみ合わせがどんどん変わっている時に、ガチッとしたかみ合わせを目指す!大人の矯正なんて、到底スタートできませんよね。ましてや、最終手段である抜歯をする矯正治療をするなんて・・・。早くても女子は中2以降、男子は中3以降くらいだと考えてください。その後の年齢制限はありません。

「装置は、お薬」

体調が悪いと、内科のお医者さんで問診や触診、各種検査をしていただき、先生に診断していただいて、治療としてお薬や生活上の注意をいただきます。
これを矯正治療に置き換えて考えてみると、診査した後に結果をご報告する診断の際に提示される装置は、まさにお薬の処方と一緒です。
「○○ちゃんは、夜だけ使う取り外しの装置なんですけれど・・・うちもそれがいいのですが・・・」は、
「○○ちゃんと同じお薬がいいのですが・・・」ということになります。
矯正相談に来ていただいた方に、そのような事情を説明するのですが、お母さん・お子さんの頭の中で「お薬=矯正装置」は成立しないようでして、「なんだよ出来ないのかよ」って空気になったりします^^;

◇取り外し式の装置は優しい?!
取り外し式の装置は、子供に対して優しい装置であるとの印象を持たれる方が多いように感じます。
確かに接着剤で歯にはりつけてしまう固定式の装置は、かわいいわが子に負担を強いてるような印象です。
しかし、取り外し式の装置のもっとも大きな欠点は、装置を着け続けなければいけない点にあります。
簡単に外せてしまうのに、です。
子供が自分を律して使い続ける。
それが出来なくなってくると、ご両親がコントロールせざるを得ません。
きちんと使えないと、治療とは呼べない結果になってしまいます。
結果的に治療の大きな部分をお子さんと保護者の方が負うことになります。
当院でも取り外し式の装置を処方することがあります。「使い続けないと結果が出ないんですよ」としつこくしつこくお話ししてから、治療開始のためのサインをいただき、治療をスタートします。それでも、稀に患者さんや保護者の方と微妙な関係になるのはこの取り外し式装置です。

「治療は、患者さんのもの」

いろいろと書いてきましたが、矯正治療は患者さんのものです。矯正学的な話は分かったけど、どうしても気になるガタガタなどを「今」治したい!、ということでしたら利点欠点を知っていただいたうえで、今の時点でなるべく短時間できれいに治療させていただきます。気持ちの負担になっていた部分が、自信を持てる部分に変わってもらえるように頑張って治療いたします。

「動いてしまうのになぜ?」

歯は一生動いていて、その中でも子供時代は激動期だと申し上げてきました。動いてしまうのになぜ子供の時の矯正をされる方がいらっしゃるのでしょうか?次の項目では実際に当院で行った子供の時期の矯正治療を見ていただきたいと思います。